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前回、物流コストという言葉の定義を考える時に、様々な視点があることを説明しましたが、今回はその中の機能別観点での物流コストについてお話ししたいと思います。この機能別の物流コストというのは、一般的に経理処理と呼ばれる帳簿管理、つまり会社の家計簿のようなものを記入するときに使われる科目とほぼ一致しており、主に物流にかかる人件費、運賃、保管費用(これは、多くの場合、地代家賃、機械や設備、建物にかかる費用、コンピューターシステムなどの情報関連の費用を含みます)、またその他事務用品費や水道光熱費、廃棄費用などの一般経費などが挙げられます。この費用の割り振りは、実は各社個性がでるところで、明確に物流として計算しない場合や、また会社の活動全体に含まれている場合もあります。この辺りが会社の物流コストの把握を難くしていると言えます。今回は、この機能別観点の物流コストがどのようなものなのかイメージできるように、上に挙げた科目について一つ一つ丁寧に説明したいと思います。

   

まずは、物流にかかる人件費です。自社でトラックを持っている会社を除いては、(自社トラックで配送業務を行っている会社は、輸配送にかかるドライバーの費用や荷積み荷降ろしの人員費用が必要になる)物流にかかる人件費とは、物流部門の管理者や事務の人員、倉庫や生産現場での物流エリアなどの物流現場で作業するために必要な人員の費用となります。物流現場では、商品の受取や入荷チェック、倉庫への格納、棚卸。ピッキングや仕分け、検品や値札付け、ラベル貼りや梱包など、様々な作業がほぼ同時進行で進んでいます。この作業を遂行するために必要な人員や、物流で必要な書類や伝票、ラベルなどを処理するために必要な事務処理人員、またこれらを円滑に進行し業務を完了するために、勤務の体制や人員の調整、環境の整備や教育を実施し管理する人員、リフト作業や物流機器(自動倉庫など)の設備の運用などの特殊技能を持った人員、物流機器のメンテナンスや保守などを実施する人員、システム開発などに関わる人員、沢山出荷されたときに本社から応援に出ている人員など、すべての人員を含めて物流の人件費と考えられます。

   

次に運賃についてですが、自社でトラックを持っている会社の場合は、トラックにかかる費用とその燃料、保険費用などを含みますが、一般的には運送会社に支払う費用がそのまま運賃となります。運賃は、大きく3つ(①商品や原材料を調達するために必要な運賃や輸入諸経費、②複数の工場や物流センター間で商品や原材料を移動させるために必要な運賃、③商品を販売するために必要な運賃や輸出諸経費)に分けられます。

   

最後に、倉庫業として最も重要な保管費用について見ていきたいと思います。この費用は、大きく2つに分けることができ、その一つは当社のような外部の倉庫会社に預ける「支払保管費」。もう一つは自社や関連会社の土地に倉庫や建物を立てて、保管設備など投資し、情報システムの導入などを実施して商品を保管し、その建物の維持や建築コストなどの経費を保管費用とみる「自家保管費」があります。一般的には、一年を通して安定的に商品を販売し、売り上げも安定している会社は、自家保管費で対応するところが多く、季節性の高い商品を取り扱っている企業は支払保管費で対応することが多いようです。

   

在庫を持つための保管費は、製品そのものを保管する面積と、入荷や出荷など作業に必要な面積、流通加工など店舗補助作業を行うための面積、またそれらの作業を行うための通路の面積などを合算するのが一般的です。保管費用のコストを押し上げる要因は、計画にない在庫の増加、全く動かない在庫(デッドストック)や、なかなか動かない在庫(スリーピングストック)などの増加、容積を有効活用できていない保管、伝票処理が遅れている商品(特に返品処理)の増加などが挙げられます。これらの保管費用、つまり保管面積を削減することは、阪南倉庫にとっても非常に重要で、例えばあるお客様の事例では、自社保管で400~500坪ほどの倉庫を使用していたお客様が、当社が在庫の伝票処理の方法などをシステム化し、在庫をインターネットで見えるようにしたことにより、まったく動いていなかった在庫を一掃、また生産や販売の計画も在庫が見えることによってスムーズになり、保管方法もネステナーや中量ラックなどで効率的に保管できるようにしたことにより、半分の200坪で管理できるようになり、保管費用も大きく削減できました。

   

このように、今回機能別物流コストについて説明したことで、その定義の難しさはわかって頂けたと思いますが、ここで最も重要なことは、曖昧な物流コストという認識についてお客様としっかりとお話しし、明確な基準を設定することによって、実際にコストを分析し、合理化する体制が作れるということです。阪南倉庫のように、物流サービス事業者としてお客様の物流コストを売上として頂き、実際の物流作業を実行する立場の会社は、お客様と一般的には対立軸で接してしまうことが多くなってしまいます。そのような状況を打破するために、共通認識できる指標や手順、さらにお客様の会社経営をより良くするという同じ目的意識を持つことによって、つねに合理化を目指した関係を築くことができるのです。

   

   

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