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時間の意識が商売を変える

CATEGORY /  事例集

事例集もずいぶん長く同じテーマになっています(笑)。ただ、今までお話してきた「リードタイム管理」というテーマは、これからの物流管理の考え方に非常に重要なので、細かく事例を交えてお話してきました。今まで4つのポイントとして、「①提供するサービスの明確化、②生産から供給までのサイクルの構築、③受注管理の徹底、④物流ルートの検討と選択」の内、2までをお話してきましたので、今回から2回連続で、あとの2つを一気に説明したいと思います。ということで、今回は「③受注管理の徹底」についてお話いたします。一般的に受注は、ある会社が商品を販売するときに、お店であれインターネットであれ、お客様からの注文があったという事実があり、その時点でまだ販売できていない状態のことを言います。受注の方法は、電話だったり、FAXやはがきだったり、コンピュータで自動に送られてきたりといろいろありますが、それらのお客様からの受注を整理して、きちんと販売に繋げるための管理を、受注管理と呼ぶこととします。今回は、この受注管理とリードタイム管理がどのように関係しているのか、ある事例企業の変化を研究しながら考えたいと思います。

   

A社は、お酒や飲料などの生産・小売りを行っており、グループ会社にレストランやホテルのチェーンまでを持つ大企業です。この企業は、グループ全体の店舗向けに、自社商品や他社商品などを供給する一方で、その他の小売業者に対しても、同様に供給しています。市場の多様化にともない、細かい在庫管理の必要性がありましたが、お酒や飲料は非常に大きなロットでの生産が基本になっており、競争に勝つための積極的な新ブランド展開などによる品種の大幅な増加により、A社の管理体制は混乱を極めました。生産量を最適化しなければならないというプレッシャーはありましたが、最終製品は広範囲な流通の仕組みにより拡散しているため、品質管理などを含める、全体的な在庫管理が非常に困難になっていったのです。このような環境下に陥ったA社は、得意先の状態に合わせて数々の対策を練っていきます。

   

新商品や品種の増加は、A社のような企業の経営を圧迫したことは明らかですが、今のような競争社会で生き残る為には、それらの販売戦略は当然のものといえます。このような困難な状況に対して、A社は、まずは自社の受注先の特質とその受注形態を研究するところから始めました。自社グループにレストランや専門の小売、またホテルを持つA社は、それぞれの販売ルートが持つ受注の特性と、その流通方法について研究することにより、それらの需要に合わせた柔軟なネットワークを構築することに徹底しました。つまり、それぞれの販売拠点とそれらへ納品する供給拠点、またその供給拠点に補充する生産拠点を、受注の形態により再配備していったのです。これらの再配備を支えたのは、それぞれの拠点を結ぶ情報ネットワーク網でした。A社の販売拠点は、すべて自社グループであったため、その売れ行きはコンピュータで全て管理されていました。それらの実需に合わせて、供給拠点や生産拠点をコントロールすることにより、非常に柔軟で効率のよい管理が可能となったのです。

  

これにより、一時的に利益率を向上させたA社でしたが、世の中のデフレの影響もあり、すべての食品関連での価格競争が進み、さらなる改善が要求されるようになりました。ここでのA社の方針は、画期的なものでした。A社にとって、一番徹底したかったことは、全体的な(流通在庫も含む)在庫の出来る限りの削減と、それと同じくらいに欠品をなくすことでした。そのためにA社がとった戦略は、自社商品以外の自社販売拠点で売っている商品をできる限り集約して倉庫(協同供給センター)に保管する方法でした。A社はメーカーでありながら、非常に力のある小売会社であったので、自社以外の飲料も多く取り扱っており、それらの供給のリードタイムが、自社製品のリードタイムに比べると非常に貧相なものであったことに気付いたのです。まずは、大きなシェアを持つ他者の飲料会社と、(各拠点にある在庫情報や販売予想情報、販売実績情報など)情報交換を実施し、その情報に基づき、その他飲料会社はA社の指定された協同供給センターに納品。その時点では他社在庫として情報を共有し、協同供給センターからの出荷指示が出された時点でA社の在庫となり、他社の売上が計上される。受注前の協同供給センター内での在庫管理は、供給会社各社が管理するので、各社はそれぞれのタイミングの最適な効率で、供給センターまでの生産・配送計画が練ることができ、またA社にとっては、必要最低限の在庫しか必要としないばかりか、欠品阻止率が当初95%だったものが、99.3%に向上し、実質在庫日数は、1か月以上かかっていたものが、1週間以内と大きく向上しました。

   

この事例の改善で、A社は在庫削減効果で数億円、運送面での協同配送の効率化も含めると、数十億円のコスト削減に成功しました。A社は、それらの成功事例をもとにして、それまで取り組んでいなかった多くの取引先に対しても協力を募り、協同在庫管理体制を構築。数百億の利益を、これらの協同在庫管理体制から築きあげました。ここで重要なことは、注文情報の計画(予定)や実行(販売)など、何がどれだけ、どのタイミングで動くのかという情報を有効活用していることです。今回のような改善は、時間軸の管理、つまりリードタイム管理の情報がないと実現できないのです。

   

    

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