日本の倉庫業は、江戸時代の後期から明治時代に、お米で納税していた仕組みをより効率的に貨幣化する仕組みを規則として明文化することにより、それまで金融事業の一部だった倉庫事業が独立法人化されたことにより生まれました。金融業の一部ということで、イメージ頂きやすいのは、自分のお金を銀行に預けた時、いつどこからどれくらい入金されたのか、通帳に記帳すること。また、自分がいつどれだけお金を引き出したか記帳すること。また自分が買ったもののカードの引き落とし、金利の支払い、受け取り、様々な商取引などの記帳など。この点においても、個人が金融機関と繋がる重要なポイントは、銀行通帳であることがわかります。倉庫業も同じです。倉庫業で重要なポイントは倉庫台帳で、様々な情報(どの取引先の、どの商品を、どこ向けに、いつ、どのように、どれだけなど)を記帳し、管理することが基本になります。この紙で管理していた台帳をコンピュータで管理できるようにした仕組みが初期の倉庫管理システムです。
初期(昭和50年代)の倉庫管理システムは、倉庫台帳つまり在庫管理の機能が主体なので、お客様の生産管理や販売管理のシステムに付随していることが多く、また開発コストが非常に高かったこともあり、この頃は倉庫会社が独自に倉庫管理システムを構築していないことがほとんどでした。平成に入ると、コンピュータの低価格化や情報ネットワークの整備などから、倉庫会社が独自の倉庫管理システムを所有することが増え、それに合わせて顧客との情報連携が必須になり、倉庫管理システムにインターフェイスと呼ばれるシステムを繋ぎ合わせる機能が特に注目されるようになりました。さらに、倉庫会社が今までの入出庫保管だけでなく、流通加工と呼ばれる多様な作業をサービスとして提供するようになると、作業管理の仕組みや機械化も必要となり、倉庫管理にその機能が求められるようになりました。
つまり、倉庫管理システムは、①在庫管理機能、②インターフェイス機能、③作業管理機能の3つの機能で成り立っている訳です。働き方改革など、国の指針で機械化が叫ばれる中で、倉庫会社が一番求めている機能が、③の作業管理機能になりますが、倉庫会社が倉庫管理システムを導入する上で一番重要なことはなんなのでしょうか?
その答えは、①の在庫管理機能です。実は倉庫会社が、営業倉庫として自身の存在意義を考えるときに、もっとも大切な機能は在庫管理機能であり、ここが正確な情報でない場合、ほとんどすべての物流に関するご提案が成立しません。先のロジスティクスの用語でお話しましたが、企業の生産や販売と連動したロジスティクス計画も、複数企業と連動したサプライチェーンマネジメント計画も、実は商売の数値指標の基準は、商品(在庫)の管理を正確で、適時に把握することに他なりません。お客様の経営を倉庫会社として支援するために、最も重要な機能は、正確な在庫管理なのです。
逆に言うと、この正確な在庫把握がどれだけ難しく、一般的にお客様が自社でなかなか実現できていないことは、非常に大きな労力をかけて、また場合によっては数日間商売を止めてまでも行う棚卸という業務で在庫を把握しなければならない事実を考えてもわかるかと思います。
棚卸業務は、実際に倉庫会社がお客様から仕事をお受けしている場合でも実施されますが、お客様と一緒になってより良い在庫管理を実現するために、じつはインターフェース機能も重要であり、お客様との適切な繋がりを作り上げることにより、毎日在庫が正しく処理されているか確認することができ、また在庫管理情報を共有することが可能になります。さらに、作業一つ一つが正確に行われているかどうか、そのために作業管理の徹底や機械化を実行することにより、正確で迅速な在庫管理に繋がり、棚卸業務も合理化され、迅速な経営判断に繋がるという訳です。
この在庫管理機能を実現するために、多くの倉庫会社は知恵を絞っているにもかかわらず、この点の重要性を説明できていない倉庫会社が多いことも事実です。「倉庫管理システムって必要ですか?」とお客様に質問された時に、当社は、「はい。御社に良い物流のご提案をするために必ず必要です。」と胸を張ってお答えできるように、これからも努力し続けたいと思います。
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