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川の流れと商品の流れは同じ

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前回の用語集の生産物流に関連して、事例集でもリードタイム管理の一環で、生産についてお話したいと思います。リードタイム管理の4つのポイント「①提供するサービスの明確化、②生産から供給までのサイクル(循環)の構築、③受注管理の徹底、④物流ルートの検討と選択」で、前回まではサービスの明確化ということについてお話しましたが、今回は②生産から供給までの循環の仕組み構築について、事例を通して研究していきます。

    

アパレルメーカーであるA社は、十代から二十代の比較的若い年齢層をターゲットにして、全国的に商品を製造販売している日本でも有数の企業です。画一的なデザインで、大量販売する形とは違い、ファッション性を重視した販売展開で、確実にまた継続的に増収増益を達成しています。ただ、このA社が成功している理由は、流行にいち早く対応しているという点だけではなく、在庫を持たずに活動するというも、重要な理由の一つになっています。

   

店舗へ商品を供給する全体のプロセスは、A社の本社デザイン部の中で活動する、ファッション・宣伝および小売のスペシャリストで構成された組織横断的なチームから始まります。デザインは、ファッションショー、競争相手の販売店、大学のキャンパス、クラブ、カフェ、バー、もしくはターゲットとなる顧客のライフスタイルに関係すると思われる他の場所やイベントを視察することから得られたインスピレーションによって、ファッションの最新トレンドを反映しています。また、POS(Point Of Sales:店舗販売情報)データとその他販売現場での報告により、流行傾向に関するチームの理解がさらに深まります。

    

まずは、チームのデザイン部門専門社員が初期のデザイン、生地、プリント地や色などの指定に責任を持ちます。次に宣伝広告部門の専門社員が提案された商品がどれくらい売れるのかその可能性を確認することに責任を持ちます。もしデザインが受け入れられれば、宣伝広告部門の専門社員が、チーム内の原材料・商品調達部門の専門部員から原材料の価格まで調査し、商品の利益率を算定して、標準価格を決定します。この時点で、必要とされる商品の数などの製造工程サイズ、広告媒体や全国各販売店での発売日などが決定されます。

   

この中で原材料や商品は、購買部門の専門社員によって国内だけにとらわれないで、中国などを含む海外からも広く調達されます。このような幅広い供給企業を利用した幅広い調達政策は、ファッション生地選択の可能性を最大限に広げる一方で、特定の調達源や供給企業への依存リスクまでも軽減しています。また、定番商品に代表される幅広い層に長い期間販売していく商品の約40%は、中国などの海外生産センターから完成品として輸入されていますが、残りは、日本国内で高度に自動化された工場や中小企業下請工場のネットワークを利用して、日本国内ですぐに供給できる体制で製造されています。

   

A社の生産システムは、コスト効率を高めることが可能な活動(染め、裁断、ラベル貼付、梱包など)は、自社で行い、その他労働集約的な最終工程を含む生産活動を、それぞれの作業工程などのグループに分けて300社以上の中小企業のネットワークによって行われています。これらの企業は、基本的にA社を中心に操業しており、その見返りとして、厳格な時間と品質の目標達成のために必要である技術的支援や、財政的な支援、またロジスティクス面での支援も受けています。A社は完成品のみの在庫費用を負担しているため、在庫費用は最低限に抑えられています。ただし、A社の基本姿勢として売上予想よりも少ない生産計画にしているため、生産は常に余剰となることはなく、在庫回転率は1ヶ月で2回転以上(2週間で1回転)とアパレルでは考えられない率となっています。

   

このように、計画通り生産された商品は、物流部門の専門社員により拠点計画し、デザイン部により決められている棚割りをもとに、必要な店舗に次々と供給されます。店舗側は、週に2回の商品供給を受けることができ、その後消費動向を明確に読み取りつつ、さらなる合理的な流れに繋がっていくのです。淀みのない商品の流れは、長い年月をかけて対策を繰り返した都心の水害対策と同じように、計画を立案し、実際に流した上で、問題点があれば解決する努力を重ねることで初めて実現されます。次回は、リードタイム管理の中でも非常に今注目されているサプライチェーンマネジメントの考え方と合わせて、実際にこのA社がどのようにして生産から供給までの循環を構築しているのかを研究します。

   

     

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