製造工場で商品が作られ、その商品がどこかに出荷される。どのような商品かは別にしても、そのことを想像することはそんなに難しいことではないと思います。一般的に製造工場で作られたものを円滑に流すための物流サービスを、生産物流と呼びます。その他に小売りなど商品を販売するサービスを考える販売物流、販売物流の一部ですがインターネットでの販売を専門的に考える通販物流、商品返品や部材・副資材などの特別な物品のサービスを考える特殊物流など、物流サービスは大きく4つにわけることが可能ですが、今回は特にこの生産物流についてお話したいと思います。以前のブログで(8月31日分)、倉庫業の始まりは、税金をお米など物品で払っていた時代に物品を保管して、現金化する流れの一端を担うことから始まったとお話しました。生産された物品の保管とその後の物品の流れを管理する、つまり倉庫業は生産物流から始まったと言えます。
まずは簡単に生産物流についてお話ししますと、生産物流とは原材料や部品・半製品、生産された製品を保管することがその機能の主ですが、それ以外にも作る製品の部品の多さや製造した日時の管理、実際に企画してから完成品ができるまでの期間の長さなど、作るための効率を最大限に高めるために、物流が役立っています。ただ、一般的に製造工場ではそのような倉庫も自社の工場敷地内に存在することがほとんどです。では、なぜ外部の倉庫会社にわざわざ保管するような事態が発生するのか。その代表的な原因は、製造と販売のズレから生まれます。例えば、お客様が欲しいと思うタイミングと、原材料を調達して製品になるまでのタイミングが合わないこと、またお客様の欲しい量と、生産効率が良い量が合わないことが挙げられます。そのほかには、原材料、部品・半製品、製品の保管量のバランスが著しく変化した場合があります。例えば政治的な理由で原材料が手に入り難い状況になることが予想される場合、原材料の比率が高くなりますし、また工場の補修やメンテナンスのため部品・半製品の在庫を作り溜めが必要になりますし、お客様からの大口の注文のキャンセルなどが発生し製品の在庫が急激に増えたりなどがこれに挙げられます。
そもそも工場を設計する段階で、事業拡張も計画に入れて設計される訳ですが、それを上回る変化が発生した場合、事業目的と直結する生産設備などには追加投資されても、直結しない倉庫に投資は回らないことが多く、結果外注化(倉庫会社への依頼)が進む訳です。これは作業している人でも同じことが言えます。工場内の物流が滞るとすべての商売が滞ってしまいますので、急激な取り扱い量の変化があっても動じない体制をつくるために、一部工場内の倉庫であっても、倉庫会社が荷物の出し入れの作業を行っている現場もあり、製造工場での物流作業の外注化は進んでいると言えます。
まったく話は変わりますが、販売物流の比率が高い我々にとって、非常に悩ましい課題があります。それが工場直送です。物流センター経由ではなく、工場から直接得意先、つまりお店、個人の消費者に配送する仕組みが直送です。一般的に販売物流は、当社がお客様に提供しているサービスと同じように、お客様の本社、もしくはもっとも販売量が多い地域に、物流センターを集約的に設立し、各所に点在する生産拠点から商品を入荷させて、お客様の細かい要望にお応えしつつ、多品種少量で出荷していきます。作業を集約し、人件費を抑えること、また消費地に近い立地であり、また方面別に固まった荷物を運送会社に渡すことで、配送料金が抑えられることにより、コストを抑えて運営することができるのです。ただ、出来る限り物流コストを削減するためにということで、経由地の物流センターを介さずに製造工場から直接出荷しようという流れが盛んになっています。これが工場直送です。
このような直送出荷は、一見コストが大幅に削減できるように見えますが、実際にはそんなに簡単なことではなく、製造工場が直面する課題がいくつかでてきます。1つ目は、「情報連携の難しさ」です。商取引の電子化が進んでいる中、数多くの納品先様との情報連携をするための技術と、高額なコストが必要となります。次に、「短納期」です。納品先様は、今日注文したものを翌日に届けて欲しいと言われることも多く、その対応に追われることになります。さらに「多品種少量出荷」の課題もあります。実際に工場では、完成品の梱包形態(箱単位)での作業が常識ですが、納品先様の要望はそれよりもさらに細かい1個単位の出荷を求められるのです。最後に、様々な「お店用の加工作業」です。物流ラベルの貼付や納品書の貼付、値札つけやギフト加工など納品先様の細やかな要望に応えるための加工が必要になります。
今までの担ってきた保管中心の仕事に、さらに細かい原料調達管理や在庫管理。納品管理、運送管理などを、バランス良く整える努力が、いまの生産物流には求められています。製造工場で出来上がったものが流れる姿は容易にできますが、実際にその流れを合理的に設計することは非常に複雑で難しく、ここにプロフェッショナルとしての倉庫会社の必要性をアピールすることができるのです。
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