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投資家が考える物流の未来と実際

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前回、物流不動産投資という用語集で説明しましたが、今回はその事例集ということで少し具体的な内容で物流不動産の近況のお話をしたいと思います。そもそも、物流不動産投資がここまで活発になった理由は、2000年に法律で定められた不動産専用の投資の仕組みと言えます。この仕組みは、簡単に言うと不動産に投資する会社が、その投資資金を投資家と呼ばれる人たちから集めて不動産を取得し、その不動産から得られる利益を投資家に分配する仕組みです。当初は、不動産価値が高いと呼ばれたオフィスビル、商業施設、住宅施設などの人気不動産物件を中心に開発されていましたが、海外の不動産業者の参入と成功、景気の悪化による人気不動産物件の運用低迷などにより、物流不動産が注目され次々と投資されています。ちなみに2020年に実施された不動産投資の内、物流に占める割合は50%に及んでいることからも、物流不動産が不景気に強く、投資安定性に優れていることが証明されていると思います。

   

物流不動産の時代経過については、また別の機会にお話しするとして、今回はそのような活況な物流不動産投資の波を受けて、各投資会社がどのような考え方をしているのかを事例をもってお話ししたいと思います。最初の事例は、海外の物流不動産投資会社A社です。この会社は、いわゆる物流不動産を日本に広めたパイオニアで、日本で物流不動産投資がまったく意識されていなかった時に、本格参入し大成功した会社です。日本国内の不動産投資会社が、物流不動産に見向きもしなかった時には、A社を中心に物流不動産投資が行われ、不動産の運用先に合わせた倉庫建築(Built to suit:BTS)を中心に、開発を進めました。また不動産投資の認知度が上がり、加えて国の物流効率化の法整備にも後押しされて、大口の不動産物件の取得が可能になったころから、マルチテナント型と呼ばれる超大型施設の建設も進めてきています。外資企業の素晴らしいところは、海外でも投資できる基準をしっかり社内で持っているところで、行き過ぎた投資(つまり十分な利回りが見込めない投資)に対してはかなり抑止力が働くことです。A社は最近の物流不動産投資の人気により、開発コストが非常に高くなっており、今までと同じ流れでは投資が継続できないと考えています。そこでより付加価値の高い消費者に近い物流施設の開発を計画し、都心のコンパクトサイズの施設を開発し消費地での配送力を後押ししたり、冷凍・冷蔵など特殊な施設を開発することにより、独自性を上げる努力をしています。

   

つぎに国内最大手B社の事例です。この会社はそもそも物流専門ではなく、不動産の開発から建設まで受ける総合事業者で、とくに住宅の開発を得意にしていました。また不動産の取得など独自のルートで地権者や自治体と繋がり、多くの開発実績のある会社でした。2010年代より物流の大型施設の開発、建設に乗り出し、大きな成果を上げています。ハウスメーカーらしく、従業員の目標管理意識も高く、会社が計画した開発数値を達成するために一人一人がむしゃらに努力しています。現在も大型マルチテナントをバンバン開発しているB社がいま一番力を入れていることが、企業買収や最新技術企業との連携です。物流不動産をどんどん開発するのと同時に、その施設を使う側の企業を買収して、使う立場で施設の分析をした上で機能を拡大していくことにより、不動産価値を上げる努力を行っているのです。最新の機械やシステム、物流設備、コンビニや託児所などを設置することがこれにあたります。さらに、今後の展開として物流の総合システムを作り上げて、連携させることにより、B社の倉庫で保管すれば、全国、全世界と繋げるように考えています。

   

この2社の事例を説明してどのように感じましたでしょうか。外資企業のA社は投資と儲けのバランスを考えて投資効果を最大にするための努力をしていること、また国内最大手B社は、開発・建築・運営など部署ごとに目標数値を定めて、拡大することで最大利益を得る努力をしているのではないでしょうか。投資家の視点で見た時に、安定的に利益を上げたいならA社に投資するでしょうし、リスクはあっても大きな利益を得たい人はB社を選択すると思います。これは、投資する人の考え方によるので良いとして、私たち物流業界にとって重要なことは、特にB社のように大きな資金力で新しいことを開発する事業者の動向を把握することです。この会社がいま何に投資して、実際に導入にあたってどのような課題があって、さらにどのような効果を得ているのか(または失敗しているのか)把握することで、中小企業がリスクを最小にして投資することに繋がるのです。

   

   

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