BLOG

労働生産性向上のカギは紙が握っている

CATEGORY /  事例集

今回は早速、前回でお話しした物流施策大綱3つの実現すべき物流の形の、最初の「簡素で滑らかな物流」に関して、事例でよりわかり易くお話しいたします。簡素で滑らかな物流では、5つの重点項目を実施すべきとなっています。①物流デジタル化の強力な推進、②労働力不足や非接触・非対面型の物流に資する自動化・機械化の取組の推進、③物流標準化の取組加速、④物流・商流データ基盤等、⑤高度物流人材の育成・確保ですが、そのほとんどが単純に言うと情報化の推進にあたります。その情報化のプロセスを具体的に見ることで、その施策の難しさと解決すべき課題に注目したいと思います。物流業界は、この滑らかな物流の重点項目を見ていても、高度人材などの人手不足、小口・多頻度配送への対応、ドライバー不足など、様々な課題に直面しています。こうした課題の解決に向けて情報化、つまりデジタル技術の活用が注目されていますが、その実現のためには、荷主、倉庫、物流会社、店舗など様々な事業者が関係し連携する必要性があります。そこで企業単体ではなく、複数が関わり合いながら、情報化を進めることに成功した事例について、お話しいたします。

   

こだわりの品揃え、ユニークな店舗展開で成長を続ける食品スーパーマーケットチェーンのA社では、最新の物流センター設立に合わせて情報化を推進し、流通BMS(Business Message Standards:事業者間標準仕様メッセージ)導入を決定し、現在500社を超える全取引先のうち半数を超える約300社もの企業との流通BMSによる取引を実施。それにより受発注と物流インフラの刷新が進み、受発注業務が大幅に効率化され、本部経理部門や取引先などの、同業務にかかる負担軽減を実現したのです。A社における流通BMS導入プロジェクトは、成長戦略の一環として社長のトップダウンにより15年前の春にスタートしました。A社は、特徴のある品揃えを強みとしており、輸入商品を含めて店頭の在庫を切らすことなくコントロールすることが重要となります。以前は受発注のみのデータ交換であり、取引先や店舗からの出荷情報や着荷情報をデータとして受信できていませんでした。納品情報も伝票などの紙でのやり取りであったことから、その処理が業務負荷となる上に、処理のタイミングも合わず、各拠点の在庫情報がリアルタイム管理できないことから、店の単品在庫が的確に把握できないという問題がありました。さらに、A社が他店にない珍しい商品を扱うという強みは、一方で取引先が小規模の企業や生産者が多く、実際に情報化を進める上で大きな障害となっていたのです。

   

そこで、まずは各種フォーマットを統一し、各店舗と取引先間で、発注に加えて出荷や納品・返品などのデータをリアルタイムでやり取りできるシステムの構築を進めました。同時に、500を超える取引先を集めた説明会を、導入メリットも含めて使用方法や導入サポートに至るまで丁寧に行い、普及率を高めていきました。また、今回の情報化の推進を、受発注データに限らず、物流との連携で出荷・納品データなども含めることで、よりスピーディーにやり取りできるようになり、的確な在庫把握が実現できたのです。

   

今回の情報化事例では、販売機会の損失防止、小規模の店舗の限られたバックヤードのスペースが有効活用、品揃えのさらなる充実など、顧客サービスの向上に大きく寄与しましたが、最も大きな効果は、検品作業や伝票計上が情報化により一括処理が可能になったこと、また取引先ごとの支払伝票などを自動的に起票可能となったこと、仕入れ伝票の確定作業が効率化され、ほぼ伝票レス処理になったことなど、業務の合理化つまり「生産性の向上」と言えます。この事例を見ると、単純に考えると「生産性向上」の第一歩は、紙の処理をなくすペーパーレスの推進と言えるのではないでしょうか。皆様も様々な理由で紙のやり取りがまだ残っているはずですが、改めて生産性向上のために、その紙をなくすことから始めてみてください。

   

   

#事例集

#物流施策大綱

#簡素で滑らかな物流

#流通BMS

#生産性の向上

#ペーパーレス

関連用語

一覧へ