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それぞれの選択と将来の形

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何十年も先の未来から現在を見ると、我々が直面している現在の環境は、歴史的な転換期だったと言えるのではないでしょうか。新型コロナウィルスによる1年以上という長期間の人流の分断、抑制。ロシアやヨーロッパを発端としたエネルギー問題。短期間での全世界一斉の大型金融緩和と金利引き上げなどの金融引き締め。カーボンニュートラルへの大転換など、数えればきりがありません。このような大転換期に、製造業、商社、小売業、物流業など、厳しい環境に適応するためにどの業態でも生き残りをかけて変化しようとしています。今回の事例集では、その中でも阪南倉庫も物流に関わっている百貨店の変化について、簡単にお話ししたいと思います。

   

まずは、百貨店の近況ですが、この業界はコロナの影響を色濃く受けた典型で、外出制限、コロナ下の外国人観光客の入国停止で、大幅に売り上げを落としました。コロナの影響を大きく受けた2020年は売上高4.2兆円(日本百貨店協会参照)と、前年の5.8兆円より1.6兆円(前年比約30%減少)の減少となっています。2021年度は、4.4兆円と若干持ち直していますが、それでもなおコロナ前の商況とは大きな開きがある状況です。ただ、ここで注視すべきポイントがあります。実は都心部の百貨店と地方の百貨店とでは、この認識に大きな違いがでています。その理由として、大手百貨店各社は、インバウンド需要なしでも、コロナ前の水準に戻しており、特に高額品を中心に衣料、身の回り品、ギフト、手土産、食料品など幅広く堅調な推移を見せています。一方、地方の百貨店は、それまで強みとしていた百貨店でしか手に入らない商品のネット通販化や、ロードサイドに大型の店舗出店による顧客流出など、その存在感が低下しているのです。その結果、不動産価値の高い立地以外のお店の閉店が進み、2022年4月末の全国百貨店店舗数は190店舗と、2017年3月時点の231店舗から5年で約20%減ってしまったのです。

   

このように、一部の都心部以外で、非常に苦戦している百貨店ですが、その存在意義を改めて見つめ直して、4つの具体策(①外商サービスの強化、②ネット販売と現実店舗の融合、③デジタル化の促進、④金融・不動産部門の強化)を打ち出しています。まず一つ目は外商サービスの充実です。百貨店A社の社長は、「2021年の個人消費額は280兆円のうち、百貨店業界全体の売上高は4.4兆円とわずか2%弱しかないニッチ産業である。百貨店は不特定多数に向けてのビジネスではない。個のニーズに一つ一つ応えていくところに商機がある。」として、特徴のある商品やブランドを揃えて、快適な買い物体験が提供できるかを強化しています。そのための仕組みがこれまでも百貨店では「外商サービス」として定着していました。外商は、お客様がご来店頂いたときに特別なカウンターや部屋で受け付けたり、自宅に出向いて要望を聞いて商品を紹介したり、催事などでは来店時各階を同伴してご案内したりと、ショッピングのコンシェルジュのような立場です。百貨店各社でも、これまでの外商サービスに加えて、お客様一人一人の対応を確実にするために、外商員の増員、スキルアップ、そしてデジタルを活用した個々の顧客ニーズの把握を徹底しています。これまでは外商担当の経験と勘に頼っていましたが、これからはAIの活用や、商品知識の豊富なバイヤーと外商が連携し、お客様の声を直接聞いての商品展開を実現させています。次に二つ目の対策、ネット販売と現実店舗の融合です。この対策だけを単純に理解すると、お店で販売しているものを百貨店がネット店舗で販売するというようなイメージになるのではないでしょうか。実際に、ネット通販を行っている会社が、実店舗で販売している場合はそのイメージに近いかと思いますが、百貨店にとってのネットと実店舗との融合は、違ったものになっています。

   

一般的なネット販売というよりは、スマホアプリや自社メディアなどのデジタルツールで、商品やサービス内容、また商品開発や製造にかかわるストーリーなどを紹介し、接客アプローチをして、商品のネット販売はもちろん、実店舗への誘導を実現しています。三つの目の対策であるデジタル化の促進は、実は一つ目と二つ目の対策に組み込まれた、百貨店らしい対策をより効果的に実現するために、積極的にデジタル技術を活用する、いわゆる百貨店でのDXと言えます。最後に四つ目の対策ですが、金融・不動産部門の強化です。金融部門は、今までの独自カードの発行などに収まらず、すでに述べた3つの対策とも連動し、様々なサービスの決済システムを実装し、お客様の利便性を徹底しています。そして不動産部門の強化は、長い歴史の中で取得した不動産を再評価し、販売拠点だけではなく、事務所や倉庫などの遊休資産の活用、販売拠点周辺の街づくり開発など、積極的に開発することで町全体のお客様の回遊性を高めることを目指しています。

   

このような百貨店業界の変化に対して、私たちのような物流事業者がどのように変化すべきでしょうか。改めて、4つの対策(①外商サービスの強化、②ネット販売と現実店舗の融合、③デジタル化の促進、④金融・不動産部門の強化)を、しっかりと分析し、そのサービスに対する縁の下の力持ちとして、物流事業者がどのように寄り添うのか、考える必要があります。まずは、その対策の中でも、外すことのできないデジタル化を、物流業界も徹底し、社会と繋がる努力が重要になるのではないでしょうか。

   

   

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