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業務改革をモチベーションアップに繋げる

CATEGORY /  事例集

前回に引き続き、基幹システムのリニューアルを行った電子部品メーカーのA社の事例について、お話ししたいと思います。前回は、1)改革の意義と目的をまずは定めること、2)参加者のメリットと目標を明確にすること、3)まずはやってみてどんどん変更することなど、主に新しい取り組みに対しての心得のようなポイントを前半はお話しいたしました。今回の残りの3つは、運用する上で重要なポイントについてお話ししたいと思います。改めて運用イメージを理解頂くためにご説明すると、一般的に基幹システムとは、販売会社の場合は販売管理システム、製造業の場合は生産管理システム、製造小売りの場合は両方のシステムのことを言います。さらに社内管理業務では、そこに会計システムや物流管理システム、人事給与管理システムなどと連携してきます。20世紀の基幹システムは、上に記した個々のシステムのことを指していましたが、それぞれのシステムが進化する過程で連携が強化され、現在は会社内に存在するほぼすべての部門が絡んで、各部門の業務を円滑に進めるために連携された総合的なシステムのことを基幹システムと呼びます。そのような総合的な基幹システムの運用についてA社はどのように進めたのか、今回はその成功の秘訣を事例を基に勉強したいと思います。

   

4)部門ごとのキーパーソンを巻き込みリーダーを育成すること

今回の基幹システムのリニューアルのように、全体最適の観点から部門を超えて、業務を標準化し、総合的なシステム開発を実施する際には、部門ごとのリーダーと現場におけるキーパーソンを上手く巻き込む必要があります。全体最適のためとはいえ、各現場にとっては日常業務が大きく変わることにより、今までの運用では解決できない問題が発生する可能性が高いからです。そうなったときに、各現場のキーパーソンが重要になります。問題が起きた時でも、なんとか日常業務を遂行するために、とにかく出来る方法を考えるキーパーソンがいることにより、止めることなく営業できますが、その運用方法が各部門の連携や管理部門との連携を意識していない場合、全体最適に繋がらない結果となってしまいます。そこで、本社が求める改革の趣旨と、現場の事情や都合の両方を理解し、その橋渡し役を務められる部門リーダーの存在が極めて重要になります。A社では、こうした重責を担えるように、部門リーダーに業務改革を遂行できる権限を与える一方、キーパーソンによる現場の本音や問題を本社に率直に伝えられるように、定例会議や社長直結の報告の流れを設けました。これにより、パッケージソフトの骨格に、A社なりの血や肉を付けることに成功したのです。

   

5)仕入先や取引先など他社との連携を積極的に進めること

今回のような基幹システムを構築するときに、欠かせないことがあります。例えば、販売システムの場合は得意先、生産システムの場合は原料メーカーなど、他社との連携が発生しそれらを円滑に進めることが重要になります。ただ、自社内の仕組みの構築でも、連携するためには大変な苦労がありますが、他社を巻き込んでの連携は、会社間の力関係から相手に合わせる開発が必要になり、さらに難しくなります。A社は、そのような難しさを解決するために、2つの積極策を採用しました。まず一つは、大きな基幹プロジェクトとは別に、連携については中プロジェクトを立ち上げることです。そのプロジェクトには強い権限を持たせて、自社の大きな方向性の確認と運用方法の共有をした上で、連携方法について連携先毎にチェックリストを作り、各担当を巻き込んで導入計画を余すことなく作りあげました。二つ目の積極策は、外部向けの連携業務質問窓口の構築です。電話やメールでの連絡も含めて、今回の連携で疑問に思った時に質問できる窓口を作り、またマニュアルなどをダウンロードができるサイトを構築し、連携しやすい環境を整えたのです。

   

6)新しい視点でビジネスを展開すること

昔から存在する商いの流れを考慮し、それに合わせた商売を続ける限り、そこに存在する複雑な流通構造や地域特性を一方的に残したままで、業務改革に取り組まなければなりません。DXが叫ばれている現在、業界基準を理解した上で慎重に計画を実行することも一つの選択肢ではありますが、抜本的な経営改革を実現させるためには、現状打破の意味も含めてまったく新しい視点や技術での仕組みを創造することも必要です。A社は基幹システムの再構築で、システムそのものの技術革新を試み、会議やプロジェクト進行はリモート技術を活用し、また、最新のICT技術(スラックと呼ばれるコミュニケーション技術)を積極的に採用しスケジュールの進捗を管理しました。また、今回パッケージシステムを採用することにより、異業種の成功事例を積極的に参考にした上で、新しい仕組みを構築したのです。

   

今回は、基幹システムのリニューアルという事例で、2回に亘ってお話ししましたが、実際には変化するためには本当に難しい問題が山積となります。「この会社は、より良い会社になるために、変わり続ける会社である」というしっかりとした信念がないと、変化することにより失うものも多いのが事実です。阪南倉庫の企業価値(Value)として挙げている「信義・誠実・共栄」と、さらに「変わらないものは変えてはいけないもの。変わるものは変えなければならないもの」という強い考えが、変わり続ける組織づくりに欠かせないのではないでしょうか。

   

   

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