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いまの時代にも黒船は来航していたようです

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今回は、物流用語として物流不動産投資についてお話ししたいと思います。私たち物流業界は、直近のコロナ禍での生活の急激な変化も含めて、いま大きな変化に直面しています。それは、新しい形での倉庫需要と倉庫面積の急増です。新しい倉庫需要として挙げられるのは、インターネットを含む通販需要の急拡大です。特に2020年は世界中で「買い物」の在り方が大きく変わった1年でした。新型コロナ感染拡大への不安が巻き起こした「買いだめ」、そして店頭から消えた商品がネット上で高く転売される問題も勃発。そして緊急事態宣言後は、買い物のための外出を控える人が増えたこと、小売店や飲食店が時短営業や営業自粛に踏み切ったことによりネットショッピングの利用が急増しました。その受け皿の多くが日本小売り企業はもちろんですが、海外通販事業者も担っています。総務省が毎月行っている「家計消費状況調査」(図1参照)では、2020年5月には、ネットショッピング利用世帯が、同調査でネットショッピングを調査対象にした2002年以降初めて、全体の50%を突破、2020年10月には前年同月比8.8ポイント増の50.9%に達しています。この急激な変化に対応するために、ネット通販関連事業者は、大型倉庫を積極的に採用することにより、ネット通販用倉庫が急激に増えることに繋がっています。

図1:出典:総務省「家計消費状況調査 ネットショッピングの状況について」

 

 

そして、もう一つの大きな変化である倉庫面積の急増について。これは、アメリカで盛んに行われていた不動産投資の仕組みを、日本でも2000年の法改正で行われるように実施されて以降、海外の事業者が積極的に日本に進出したところから始まっています。とくに物流不動産ファンドは、中リスク中リターンの比較的安定した儲けを見込めるため、海外では非常に人気の投資先と言えます。この海外の物流不動産会社の進出が始まったのが2000年前後で、その影響もあり2006年まで急激に倉庫建築が増加。実際の運用などの動向を見た日本の物流不動産投資の会社も増えて、2012年以降は増加の一途をたどっています。前にこのブログで記述しましたが、近畿圏で見ても、この5年前後で建った、もしくは計画されている新しい大型倉庫が40件以上、面積にすると4,387,800平米であり(甲子園に換算すると114個に相当するようです)、そのほとんどが埋まっている(空室率が5%以下)ということです。参考までに現在大阪倉庫協会に所属し、国土交通省に登録されている大阪の営業倉庫の面積は、3,450,000平米ですので、その面積より127%の倉庫が新しく建てられる計算です。同じようなことが首都圏や中部地方、九州地方でも起こっていることを考えると、この変化がいかに凄まじいかお分かり頂けると思います。

 

不動産ファンドによる物流施設投資が増加している要因が2つあります。まず一つはユーザー側のニーズに基づくものです。バブル崩壊以降、事業に無関係な資産投資を行っていた企業が、決算書と呼ばれる会社の成績表を良くするために、これまで自前で保有していた物流施設など資産を売却して賃貸に切替えることにより、会社をコンパクトにして機動力を高める努力をしました。また、自社物件の売却後の受け皿や、物流施設を賃借に頼っていた場合でも比較的小規模の物流施設に分散していた場合など、不動産ファンドが保有する大型の物流施設に機能を集約することにより、物流の効率化を推進したのです。

 

もう一つは、国土交通省の物流効率化法施行による用途変更の活性化が挙げられます。この法律は、2005年に施行されました。 物流を総合的、効率的に実施することでコストを削減し、環境負荷の低減を図る事業者に対して、効率化計画の認定を行うのですが、最も重要なメリットとして、要件を満たせば本来各自治体が計画している都市計画とは違った用途でも、物流施設を建てることを配慮するというところにあります。今まで建築不可だった空き地に、どんどん物流センターが建築されている現状を見て頂くと、この法律がいかに強力なものなのかが理解頂けると思います。

 

今回のブログを振り返ると、改めて日本という国は、外圧とお上の圧力に影響されやすい国なんだと笑ってしまいます。幕末の黒船ではないですが、令和の大きな変化も、外国からの圧力と国の法改正で、業界がひっくりかえるような事態になっています。物流不動産という観点では、これだけ大量に供給されると、古くて小型の倉庫は物流不動産としての価値が低くなり、困窮することは目に見えています。その時倉庫専業者の我々がしなければならないことは、サービスとしての物流をもう一度見直し、さらなるサービス向上に努めることなのではないでしょうか。

 

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