先日皆様に、国が考える物流の方向性(総合物流施策大綱)についてお話したかと思いますが、その中で頻繁に使われている言葉で少し説明が必要かなという言葉に、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉がありました。DXとは、もともとは21世紀に入ってすぐに、海外で提唱された「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念のことを指します。日本におけるDXは、経済産業省が2018年9月に日本のDXの現状を分析した「DXレポート」を作成し、その課題を解決しつつDX化を推進するためのDXガイドラインを同年12月に発表することで広く知られるようになりました。経済産業省が定義するDXとは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、事業形態を変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」となっています。難しい言葉で書かれていますが、後半の文章は会社経営そのものですから、前半部分のキーワード「ビジネス環境の激しい変化」と「データとデジタル技術の活用」この2点が重要になります。つまり、「自社に関係するビジネス環境下の変化や課題を、データ分析などにより把握し、新しい技術(デジタル技術など)により解決すること」がDXの定義なのではないでしょうか。では、そのDXの導入を推進するために、経済産業省はどのように指導しているのでしょうか。基本的には、会社の体質改善のための進め方である「DX推進のための経営のあり方、仕組み」と、情報システム力を向上するための進め方である「DXを実現する上で基盤となる情報システムの構築」の2つから構成されています。
では、まずDX推進のための経営のあり方と仕組みの構築方法について、説明したいと思います。このガイドラインでは、まずDX推進のためには、明確な経営戦略やビジョンを提示することが重要としています。次に重要なことは、画期的な変化を推進することを経営トップが自ら推進しているかどうかです。一般的に成功している会社は、変化そのものに消極的になりがちです。DXのように変革する場合は、大きなリスクが伴いますが、経営者が自らそのリスクを取って、変革を推進できるかどうかがカギとなるのです。さらに、DX推進のための体制が確立されているかどうかが重要になります。例えば、新しい取り組みを実施するときに、事前にやりたいと思ったことを設計し仮説でシミュレーションし効果を事前分析した上で実行し、その結果と仮説を検証し、それに基づき新たに仮説を得る一連の繰返しプロセスが確立できており、また実行して目的を満たすかどうかスピーディーに評価する仕組みとなっていることが重要となります。実際に大きな変革を実現するためには、ここが一番重要で、最初からバラ色の変化が待っている訳でなく、計画、設計、シミュレーション、分析、検証を何度も何度も何度も繰り返すことで、大きな成果を上げることができるのです。さらに、投資等の意思決定のあり方も重要です。一般的にどんな組織でも、変化に対しては憶病になることが多いです。失敗のリスク、投資規模や収益悪化へのためらい、投資効果の評価の難しさ、変化そのものへの躊躇。それらを乗り越えるしっかりとした意思決定のあり方が重要になるのです。そして最後に、最初に練った戦略に立ち返り、進めている様々な対策が必要な変革なのかを判断し、スピーディーに対応することが重要です。
つぎに、DXを実現する上で基盤となる情報システムの構築方法について、説明したいと思います。ここでは、体制や組織など仕組みの構築方法や情報システムの実行プロセスについて記述されていますが、少し専門的な記述が中心になるので、このブログでは、できるだけ要約して説明したいと思います。ポイントは3つです。①全体最適で意思決定すること。DXを推進するときに、このソフトを導入しませんか、この機械を導入しませんかという案内は実は多いです。経営をサポートする最新クラウドソフトによるDX実現・・・なんて広告ありそうですよね(笑)。一般的に個々の設備投資により自然と全体最適になることは残念ながらありません。その設備投資を全社的に生かすためには、その投資の経営戦略的な位置づけとそれに沿った効果を的確に判断する必要があるのです。それこそが、全体最適での意思決定となるのです。次に②意思決定や責任を他人に委ねず成否を自己評価できること。これはシンプルですね。これから国が主導のニッポンDX化推進の波がやってきますが、その波に乗って多くの事業者がサービスや製品を開発します。その事業者からDXの提案を受けた時に、「おっ、それ面白いからやっておいて」では、なく「それが当社の事業戦略にどう役立てることができるのか」と返せるかどうか、それが意思決定や責任を他人に任せず成否を自己評価できることに繋がると思います。最後に、③変化したことに満足せず変化し続けること。これは、先の体制の部分の繰り返しプロセスと重なりますが、とくに情報システムのように、会社にとっての骨組みにあたる部分の変化は、1つ成果を上げると、その成果が次の展望に繋がってきます。これを見逃さないで進化し続けることが大切になるのです。
DXについて今回はお話ししましたが、皆様いかがでしたでしょうか。最初に私なりの定義で「自社に関係するビジネス環境下の変化や課題を、データ分析などにより把握し、新しい技術(デジタル技術など)により解決すること」とお伝えしましたが、さらに今回のブログの最後に改めて定義させて頂くとすると「自社に関係するビジネス環境下の変化や課題を、データ分析などによりスピーディーに把握し、新しい技術(デジタル技術など)により解決し続ける組織を構築すること」となるのではないでしょうか。そう、DXという言葉を突き詰めると強い組織づくりに通じるのです。ここで改めて、阪南倉庫のミッション(情報集積センターとして社会を支えて繋げる)、バリュー(変わらないもの:信義・誠実・共栄、変わるもの:変わらないもの以外すべて)、ビジョン(プロフェショナルとして多様な仕事を設計する倉庫)と照らし合わせて考えてみてください。すごくシンプルなDXという言葉の持つ、深くて強い力をしっかりと感じて、スピーディーに変化し続ける組織として前進していきたいと感じました。
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