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在庫の一元化、標準化、共通化

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今回も前回に引き続き、在庫というキーワードを中心に事例をもってお話ししたいと思います。一般的に製造業であれ、卸業であれ、商品を販売する会社にとって、在庫がなければ商売になりませんが、5月17日のブログでお話しした通りその在庫が滞ってしまう(在庫回転率の悪化)と、会社にはお金が少なくなり、会社の発展の妨げになってしまいます。この在庫回転率を向上させるために必要な活動が、どのくらい生産する(仕入れする)のか、またどのくらい販売するのか、どのくらい在庫を積んでおくのか、それぞれの計画を持ち寄って管理する「生販在会議」です。文字通り生産部門と販売部門が集まり、需要予測や販売計画に基づいて製品の生産計画を立案する会議であり、在庫管理をする上で非常に重要な意味を持つ、中枢的な会議となります。ところが、多くの企業で、この「生販在会議」をしているにも関わらず、在庫回転率が計画通りいかない状況が生まれています。これは、それぞれ部門が、それぞれの責任と目的意識が違うことから発生しています。

   

例えば、販売部門は、販売予定数量をこの会議で提出する形になりますが、販売部門の責任範囲と目的は、お客様に品切れなく、少しでも多く販売することがあるので、どうしても在庫を抱え込みやすくなります。その結果、幾分か需要予測が甘くなり、在庫の増大を招くことが多くなるのですが、いざとなれば例えばグループ販売会社があるところでは、それをグループ会社に押し込んだり、またメーカーに返品したり、もっと最悪の場合には、取引先の小売店に決算前にその過剰分の在庫をいったん引き取ってもらって、一時的に在庫をなくし、決算後、返品として引き取ったりというような、とにかく在庫を無理やりに調整してでも、在庫を無くしてしまうことが販売部門で行われています。また、生産部門では、販売予定数量に合わせて、生産計画を立案するのですが、そもそも生産部門の責任と目的は、商品を安価で、品質の高い製品を、必要分生産することにあります。その必要分の生産というのが曲者で、前述した生販在会議が開かれているような環境では、生産部門はすべて販売予定数量に合わせて生産することになり、その生産数量に対しての責任は、すべて販売部門にあることとなってしまいます。これが、サプライチェーンという企業の枠を越えた環境下で行われるとき、取引上の利害関係から、もっと顕著に在庫のキャッチボールが行われてしまうことになります。では、実際に生販在会議が上手く機能している会社はどのような取り組みをしているのでしょうか。

   

化学素材メーカーのA社は、大きな景気の変化に対応できず、在庫回転率が大幅に悪化しました。A社は、これまで生販在計画を月に一回本社で作成し、個別の日々の生産、物流、受注などの実績は、個々の業務部門で実施する体制でした。今回の在庫回転率の悪化の要因を分析すると以下のような問題が浮き彫りとなりました。①販売担当者毎の個別在庫管理による予約在庫の増加、②販売担当も把握していない顧客のオーダー変更や緊急オーダーの増加、③実オーダーの計画に対するブレ拡大と工場でのなし崩し的な受注対応の拡大、④販売が市場に商品を供給しても売り切れない、⑤他社製品に対する優位性を高めるために派生商品など品種を増やしたことによる在庫増加などです。これを解決するために、A社が行った新しい管理体制は2つの特徴がありました。1つ目の特徴は、個々に任せっきりになっていた生販在の実績情報を、月次の計画と連動させた需給バランスとして本社で一括して管理できる一元化体制を構築したことです。例えば、お客様の要望などに柔軟に応えるためなど外的要因により部分最適になりがちであった業務を、会社全体としてどのようにお客様のサービスレベルを上げるかという取捨選択を適切に行うことにより、全体最適に繋げることが可能となり、在庫回転率を向上できたのです。2つ目の特徴は、業務を全体的に管理するために業務の標準化・共通化を徹底したことです。具体的には、業務マニュアルの作成から、イレギュラー業務の数値の見える化、日々の改善提案と改善内容の課題の見える化、改善会議の定例化、商品規格を標準化する検討会議を定例化、システムのマスタメンテナンスの定例化などです。この2つの管理を徹底することにより、中央集権しつつも、各現場が問題意識をもって活動することが可能になり、在庫回転率が向上したのです。

   

一般的に、組織が分断したままの状態で在庫コントロールというテーマを考えると、過剰在庫が発生してしまう確率が非常に高くなってしまいます。さらに、複数企業が関係するサプライチェーン管理の場合、それぞれの会社がリスクを回避するために、全体の在庫を多く持つことにより、在庫面ではリスクが増えてしまう結果になります。事例のように、徹底した在庫回転率向上を実現するためには、それら組織や会社の枠を越えて、一元的に管理できる仕組づくりとそれを実現するための標準化、共通化が重要となります。阪南倉庫としては、今後そのような在庫管理の一元化をサポートし、さらにお客様と一緒になって標準化、共通化することが重要となるのです。

   

   

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