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作って売るのも課題が山積

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前回の事例集でお話したリードタイム管理の「②生産から供給までのサイクル(循環)の構築」について、引き続きアパレルメーカーのA社についてお話したいと思います。一般的に服の製造販売をしている会社は、成熟した現代社会の細かい上に変化の激しい需要に応える為に、安価で大量に生産された商品をとにかく売りきりごめんで大量に売り捌く方法と、できるだけ在庫を持たないように受注に合わせて生産していく形の、大きく分けて2つの形があります。学術的に表現すれば、プッシュ(量産)型生産・販売とプル(受注)型生産・販売です。今回の事例のA社は、典型的な受注型といえます。そもそも、通常の量産型であったA社が、受注型に変化していくためには、2つの大きな乗り越えなければならない壁がありました。1つの目の壁は、資材調達を徹底的に合理化し欠品率を0%にできるようにすることであり、2つ目は、受注日をスタートポイントとして、納品までの期間を短くすることでした。

   

1つ目の壁を乗り越える為には、まず資材欠品なしという環境を整えることが最重要になってきますが、実際の現場では「そんな夢物語、到底実現できない。」というのが大多数の意見です。事例のA社も同様でした。それらを解消する為に、A社は実際使っている資材をグループ化し、そのグループ別にリードタイムを管理するようにしました。その中で、特にリードタイムの長いものや調達コストが高くて、財務面から経営の影響の大きなものを列挙し、それらから重点的に管理するようにしていきました。具体的には、問題のある仕入先の業務改善が進まず納期が一定でなかったり、また技術革新により高度な技術を要する資材に関して仕入先の受注待ちが多発し調達が困難になっていたり、また資材費低減の為リードタイムが長くなっても遠方の海外生産を選択したりするなどの商品がありました。

   

それらの問題は個別に違っており、その一つ一つを解決していかない限り、受注型の管理はできません。A社は、それらの問題解決のために、まずは要求リードタイムの明確化を徹底しました。また、どうしても要求に満たないものについては、在庫を積み上げて対処するか、また見込み発注を行い間に合わせるという形をとりました。ただし、基本設定以外の流れを取らざるを得ない仕入先に関しては、要管理仕入先として、常に基本ルールに合わせることができるように、改善しながら調整していきます。必要な場合は、仕入先を育てる意味でも、一部の業務改善のシステム変更なども積極的にA社が中心に進めて、その費用の負担まで、A社が行うこともあります。

   

このように徹底的に資材欠品をなくすことにより、全体のリードタイムの最短化が実施されます。ただし、このリードタイムが本当に最短かどうかは、また別問題です。それが2つ目の壁、リードタイムの短縮化です。A社は、一度資材の欠品をなくす動きを取った上で、現状でき得る最短のリードタイムを作ることができましたが、同時にさらなる改善を進める為に、現状の商品とお金の流れの数値化を進めました。ここでの数値化は、商品別の欠品情報など含めて、儲けそこなったことまでも含めて行われました。これらの儲けそこないの大きさに合わせて、大きく儲けそこなっている(逆に考えるともっと儲けることができる)商品は、少々単価が上がっても、リードタイム短縮を優先し調達するようにしたり、儲けそこないが大きい商品の仕入先を再検討したり、儲けそこなっている商品に関してその儲けそこないの原因を追求して、商品企画や設計を変え生産工程そのものを変化させたりと、継続的なリードタイム短縮策を検討することにより、競合他社の追随を許さない仕組みを作り上げているのです。

   

このように、生産から供給までの管理体制の確立は、物流全体の合理化、効率化に非常に密着に関係しており、それらをリードタイムという「時間」、商品の「数量」、また「金額」などのように目で見て管理することにより、進化できます。会社が常に時代の要請にあわせて変化していくためには、変化するための課題を常に明確にして、山積みになった課題に具体的に、また総合的に対処することが大切であり、そのキーがリードタイム管理になるのです。

   

   

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