以前このブログで書かせて頂いたのですが、日本は世界に誇る企業長寿大国です。100年以上続く企業は3万社以上、200年以上続く企業は千社以上も存在し、どちらも断トツで世界1位なのです。業種別でみると、製造業の長寿企業が多く、小売業、卸業などが続きます。製造業の長寿企業が多い理由は、特別な技術や能力を有していることなどが挙げられますが、一方倉庫・運輸業は全体の2%もなく、倉庫・運輸業の事業者数の少なさ、また新規参入の少なさなど、現在倉庫・運輸業が抱える課題がここにも表れているように感じます。また、売り上げ規模ですが、年商10億を下回る規模の会社が80%以上と一番多く、これは日本の中小企業が多くの産業に存在感を示しつつ、長期にわたって経営できている結果と思われます。さらに長寿企業のデータ分析で面白いデータがあります。100年企業を売上別に分けて、分母を現企業数、分子を100年企業数で割った売上規模別100年企業出現率という統計です。以下の表1を確認ください。これを見ると、すべての主要国で、500億円以上の売り上げ規模がある企業の出現率が最も高くなっていますが、ここでも突出した統計になっているのは日本で、16.8%と2位のドイツと比べても4.5ポイント差、3位のアメリカと比較すると9ポイント差と大差となっています。これは、ある程度の売り上げ規模になったときに、日本の企業が経営リスクへの対策をしっかりと取る傾向が強いことが要因と言われています。
表1:売上規模別100年企業出現率
※企業特定の条件は以下の通り。
企業活動ステータス=活動中。法人形態=事業所、公的機関、外国企業、宗教法人、小中高校を除く。所在地、売上高(年商100万円以上)情報が収録されている企業。
※記載する創業年数は、企業および団体の設立年から業歴を算出
※公表除外国(データ信ぴょう性が疑われる国)=デンマーク、ケニア、コロンビア、南アフリカ、北マケドニア
※出典=帝国データバンク、ビューロー・ヴァン・ダイク社のorbisの企業情報(2019年10月調査)を基に作成
では、ここで言う経営リスクにはどのようなものがあるでしょうか。中小企業庁が2016年にまとめた「中小企業白書」によると、「リスクを分類する方法は様々であるが、最も一般的なものは「純粋リスク」と「投機的リスク」 の二つに分類する方法である。」としています。ここでの、純粋リスクは、損害のみを発生させるリスクのことで、主に火災や水害・地震などの災害、事故や事件、テロや戦争などの国際的な紛争などが挙げられます。一方投機的リスクは、ビジネスリスクともいわれて損失だけでなく、利益を生み出す可能性もある事象を指します。例えば、新商品の開発、事業の多角化、不動産や機械設備などの投資、金利の変動、為替の変動などがこれにあたります。
ここで先ほどの統計にもあった経営リスク対策ということになるのですが、日本の大企業が、とくに入念に対策をとっているのが、大きな損失が発生する可能性が高い純粋リスクなのです。このリスク対策の方法として広く知られているのが、事業継続計画(BCP)です。これは、事態の発生または損害・損失の発生を防止・抑制する活動を計画することですが、しっかりとリスクを特定し、そのリスクに対しての会社としての方針を明確にして、細やかな対策を作り上げます。実際にどのように行動すべきなのかリストアップされた後は、会社の方針に基づいて優先順位を明確にし、迅速に行動できるように計画します。純粋リスクは、その対応が遅れれば遅れるほど、被害が大きくなる傾向があります。計画は徹底的に緻密に考える必要がありますが、リスクが発生した後の行動は、出来る限り迅速である必要があるのです。
阪南倉庫も、災害や疫病などに対応したBCPを策定しています。直近でも、2018年に発生した台風21号による被害や、現在のコロナ禍での対応など、BCPにより定められた計画を実行することにより、被害を防止・抑制することに成功しています。実際にリスクを目の当たりにして感じることは、このようなリスクを抑えるために、日ごろの準備、情報の共有、そして迅速な行動が重要だという事です。阪南倉庫がさらなる50年、100年と営業し続けるためにも、会社が一丸となってリスクに立ち向かえるように、この3つを常に念頭に置いて、行動し続けたいと思います。
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