前回は、第1次エネルギー革命の事例をお話しましたが、今回は第2次、第3次エネルギー革命について、事例をもってお話したいと思います。第2次エネルギー革命は石炭などの化石燃料と蒸気機関に表される新しい動力機関を使った時代、第3次エネルギー革命は石油と電気の時代と言えます。前述の自然エネルギーと違って、自然を凌駕するエネルギー革命であったこの時代は、まさに環境と産業のせめぎ合いの時代でした。戦争も含めて、国際競争の非常に激しい時代で、どこの国も他国を蹴落としてでも優位な立場になれるように、工業化を進めた時代でした。実際に環境問題というよりは、もっと直接的に人が生きるか死ぬかの、公害問題としてクローズアップされて、その対処についてルール化された時代でもあります。今回は、第2次の石炭・新動力時代と第3次の石油・電気時代について、事例をもってお話したいと思います。
長い長い自然エネルギーの時代から、石炭・新動力の時代への変化は、18世紀にイングランド北西部で反射炉という金属の加工技術が一気に進化したところから始まります。加工技術が一気に進化しましたが、その加工には莫大なエネルギーが必要となり、近隣の木材などの自然資源はあっという間に枯渇しました。その代替えエネルギーとして石炭を利用できるようになると、自然に依存しないエネルギーとして、金属の加工技術は一気に進化しました。そしてさらに、新しい産業(窯業、化学、機械装置、金属、航海術、蒸気機関、繊維)の時代が重なることで、世界経済は爆発的な発展を遂げました。これが世にいう「産業革命」です。産業革命以前は、人口と産業の成長は、天然資源の存在と土地の制約によって抑制されていました。土地が、食料の確保、製造業での原料、そしてエネルギーの供給源として必要であった時代は、その土地が持つ自然環境以上に成長することは不可能でした。ところが、産業革命により、資源やエネルギーの観点からすると、木材から石炭への変化、動力の観点からすると人力や馬力などの畜力や風力から、蒸気などの機械動力に変化することで、今まで抑制したものが一気に取り除かれました。その大きな変化はイングランドの人口推移をみると明らかで、産業革命前の人口変化と産業革命後の人口増加に桁違いの変化がみてとれます。(図1:イングランドの人口増加を参照ください。)。
このエネルギー革命では、今までの大量輸送の基本であった水運の物流にも革命を起こしました。人力や畜力、風力によらない船の輸送です。これにより、輸送量の増加、船舶の大型化、そして移動の長距離化が進みました。さらに、この頃から陸地の鉄道による移動が進み、輸送時間の短縮化、輸送計画の厳格化(何時出発、何時到着などのタイムテーブル化)、輸送都市の内陸化(それまでの港に依存しない都市の開発)が実現しました。これらにより物流の価格が大幅に安くなり、物流を絡めたサービスも増加。世界規模での商業取引が拡大したことはもちろんですが、人々の生活も変化し、鉄道による大人数の都市間移動や、郵便サービスなど、地元に縛られず、働ける場所に移動して働く、現在の生活環境に近い形に変化したのもこの時代です。
ただ、今までの自然環境から抽出されたエネルギーと違い、莫大な量を誇る石炭エネルギーは、安価で一般市民の生活から、様々な産業に至るまで広く浸透し、19世紀中ごろのエネルギー消費のなんと90%が石炭により賄われていました。これまで自然環境との共生でしか発展できなかった人類が、無尽蔵にある石炭という鉱物を有効活用することで発展し始めた時から、自然環境と共生する意識よりも、ときに人類に牙をむく自然を抑え込む形に変化しました。さらに、産業に偏った著しい変化は、人類の健康に多大な影響を及ぼし、公害という形で社会問題となりました。
そして、第3次エネルギー革命として、石油・電気時代に繋がります。当初石炭の代替え燃料として存在していた石油でしたが、19世紀後半に掘削技術が進歩したころから利用価値が高まり、さらにその加工技術の進歩から、様々な産業に利用されるようになりました。その典型が車などの輸送用機器での利用です。石炭と蒸気機関による機器と比較すると、小型化高出力化が実現。それらの動力を使って、電気を生み出し、さらに蓄電する技術が進歩したことから、さらなる産業の発展に繋がったのです。この時代の物流の大きな変化は、自動車による輸送の実現です。これまで、水路や線路に依存した輸送手段から、道があれば輸送できる手段への変化は、さらなる物流の発展を促しました。この頃になると道路の整備と商業都市の発展が密接に関係し、さらに電車の輸送と都市開発も絡めて、この時代の物流と都市の発展を見ることができます。
今回の事例で見てもわかるように、第2次エネルギー革命以降、人類は自然環境との依存関係を断ち切りました。人類が決して戻ることがない道を歩く中で、自然環境とどのように向き合うことができるのか、その一つの基準が「脱炭素」という考え方になります。関西電力によると2018年現在の全世界のエネルギー消費は、石炭(27%)と石油(34%)で60%を超えています。この行き過ぎたエネルギー消費を鉱物エネルギーの燃焼に頼らない形に変化することこそが、人類の発展と自然環境の維持のバランスを整える方法であり、次の第4次エネルギー革命に他なりません。この変化に、倉庫会社を含む、物流会社が何をしなければならないのか、業界全体として問い続けたいと思います。
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